コンテンツへスキップ →

「avi-session vol.9」2023.03.29 – 04.02

INFO

ひとり壁1面を使ってミニ個展をするのがテーマの企画展です。
今回は、以前に制作したZINE「ありふれたもの」を今の言葉と写真で再構成した作品を展示いたします。

会場:ギャラリー・アビィ
〒542-0081 大阪府大阪市中央区南船場2丁目2-28 順慶ビル212号室

会期:2023年3月29日~4月2日 12:00~19:30(最終日は19:00迄) / 月火休廊

Statement

死はありふれている。別れもありふれている。全てのものは変わっていく、過ぎ去っていく。
地球はおかまいなしにくるくると自転し、太陽光はサンサンと影をつくる。
影は形を変え、光が通り過ぎる。ふとあなたがいるような、そんな気がして立ち止まる。

その年の桜は煌々と咲き乱れ、風は優しく吹いていた。
桜の花よりも先にあなたは散っていった。数日後、僕だけが18になった。

中2の夏、誰もいない電車の静けさとあなたの白いシャツが朝日をはね返してまぶしかったことを思い出す。
電車に揺られながら聴かせてくれたピアノ曲。リストの『孤独の中の神の祝福』。
朧気だが断片的にイメージが残っている。

雨上がりに射し込む夕日に地面は光で溢れ、水飛沫を撒き散らし走る子ども。
どこからか薫る煙の匂いと若草の青々とした臭い。
木漏れ日が風に揺らぐ。木々のざわめく音、かすかに聞こえる踏切の音。
一瞬だけピタリと風が止み、水溜りで歪んでいた空が美しい像を結ぶ。
窓際に立つ少女は目が眩むほど強い光を受けていた。

あなたがどう返してくるのかを今はまだ思い描ける。
だが、輪郭は失われ、徐々に薄れていく。大切な言葉ですら風化していく。
でも、それでいいと思う。全ては変わっていく。

ありふれたものにあなたは溶けている。あの海に、あの光の中に。
いつか過ぎ去るその時まで。

ありふれたもの

カテゴリー: Exhibition